宮本輝氏の長編小説。2 巻ですが内容にぐいぐい引き込まれるのでスイスイ読めます。Amazon にある紹介文だと、こんな感じ。
佐和子・25歳―とりたてて不幸なことなど何もない、しかし決して幸福ではない。ある日、亡き祖父から残された日記帳を読んだ佐和子は、重大な秘密を知る。パリへ旅立ち、祖父の本当の姿を探し求める彼女は、いつしか大切な何かを追い求めている。平凡な自分に何ができるのか?佐和子が見つける答えは―。女性のひたむきな成長を描く宮本文学の傑作。
「日記に秘められた過去」「舞台はヨーロッパ」「スパイ活動」といったものはミステリー小説のある意味定石みたいなものではあるものの、陳腐な話にならずに読み手を惹き付けるのは、展開の速さと謎解きの心地よさ、歴史的背景の深さでしょうか。「戦争」が絡んでくる以上、重みが加わるのも事実ですが、それが現代にも繋がっているという描写は説得力と現実味がありました。
登場人物の過去の出来事が次第に明らかになるにつれ、背負ってきたものの大きさもひしひしと伝わってくるし、話の本筋にもきちんと絡んでくるストーリーなので、あちこち舞台が移動し、登場人物がたくさん入れ替わるものの、本筋を負うのはさほど難しくはなかったです。
オレンジの壺 上 光文社文庫 み 21-2
宮本 輝
オレンジの壺 下 光文社文庫 み 21-3
宮本 輝