スロベニアで行われた、ヨーロッパグランプリを聴きにきました。そりゃー、5団体中2団体が日本、フィリピンも含めるとアジアから3団体ですもの、行ってみたくなるのも当然ということで。しかもリトアニアからだと、ウイーンに飛んでそこから電車で3時間、交通費だけなら1万5千円くらいと、東京から地方都市行くのと似た感覚です。
演奏順は、前半が5団体中3つ、harmonia ensemble(日本)、Ateneo Glee Club(フィリピン)、室内合唱団 Oreya(ウクライナ)。10分休憩をはさんで後半は Sofia Vocal Ensemble(スウェーデン)、Vox Gaudiosa(日本)。
トップバッターのハルモニアさん、声の統一感もあるし、ハーモニーもうまく決めていてさすが、とうならせる演奏でした。特に特に、終盤の追分節考はただただ圧巻。個人に歌の力量のある人たちですし、加えて曲のもつ魅力を最大限に生かせる音楽運びで、会場を興奮のるつぼに。大分のウィステリアさんのもすごいけど、ハルモニアさんは別の違った魅力がある演奏でした。
残念だったのは、前半のルネバロ・古典もので音楽の伸びやかさがイマイチで、「指揮者がいないと不利よねぇ」と思わせる部分が若干あったこと。また、スロベニアの作曲家モチュニクが、前日、当日それまでの同じ会場で行われてた国内の全国大会でさんざん歌われていて、分厚いスロベニアンスタイルの合唱に比べて、少し線が細く感じられてしまったこと。
2番手のアテネオは、うまいんだけど分厚いベースに比べてテナーがなんとも喉声でかつ分裂していて、注意が散漫に。それでも、フォルクロア素材の曲はパフォーマンスも含めて難易度のある曲を品良くまとめていて、これまた聴衆の心をわしづかみ。
3番手のウクライナ Oreya、ここは曲を演奏するたびに会場の空気をしっかりとらえて、独自の音空間を作るのに最も成功していた団体でした。とにかく静かな曲であっても迫力ある曲であっても、むむむ、と身体を前のめりにさせて聴かずにはいられなくさせる精度の高さと美しさ。
途中からは、もうエンタメ街道ばく進で、パフォーマンスは派手だし「あんたらやってるのはgleeか?」と思わせる内容。意図的とも思われるタイムオーバー確実なプログラムで、ひょっとして賞を狙う気まるでなし?まあそれはそれでアリなんだろうけど・・という感じ。観客賞があるとしたら、確実にここです。
休憩のあと、4番手はスウェーデンの Sofia、前半の団体がルネバロ・古典がちょっと苦手かな、という印象を与えたのとは対照的に、隙のない完成度。最初はちょっと迫力で押しすぎて音の荒さが目立ったけれどじき解消。たとえていうなら、EST さんのおしゃれなところに、CAのいけいけドンドンをプラスした感じ(どんなよ?)。ビクトリアなんて、「え、こんなロマン派っぽくやっていいの?」というくらい自由にやってました。。どの曲をやっても飽きさせない、基礎力が高くて訴求力の高い演奏の連続で、1曲終わるごとに「はぁ〜(すげぇ)」とため息の出る、そんな団体でした。1曲、指揮者のBengt Ollenさん作曲の作品があったのですが、会場全体を使って、まるで自然豊かな湿原の幻想的な雰囲気を再現しているかのような、独特の音空間を作り出していました。
そして最後はVOX GAUDIOSA。つかみから表現力の幅と説得力のあるぐいぐい迫ってくる音で、いわゆる「掴みはオッケー」その後も不得意な曲というのを感じさせない、レベルの高い演奏が続きました。耕先生が「やれることは全部やった」と言われるごとく、これほど実が詰まった感のある演奏はなかなか聴けないでしょう。
もったいなかったのは、同じく指揮者が作曲した作品の O lux Beata が、歌い慣れしすぎているのか表現の幅が狭くフォルテ一辺倒に聞こえて物足りなかったこと。
30分後、結果発表。各グランプリの表彰と盾が贈られた後、「The winner is......」で呼ばれたのは「Sofia Ensemble」!期待していた日本の受賞はなりませんでしたが、Sofia なら順当かなと多くの人が思う結果だったのかもしれません。
それにしても、これほどレベルの高い、多様性に富むプログラムを聴いたのは当然ながら初めてで、ついつい合間にツイートしちゃいました。忘れられない演奏の数々、本当に楽しませてもらいました。ありがとうございました。
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